日頃から「腰を守る」という意識を持つことで、急性腰痛の発症や再発のリスクをかなり減らすことができます。日常生活の中では以下のようなことに気を付けましょう。
急性腰痛症は、その名の通り、急に発症する腰の痛みであり、いわゆる「ぎっくり腰」と言われる状態です。通常、発症直後の強い痛みは数日で和らぎ、1~3週間程で自然に治癒しますが、いつまでも痛みが消えずに慢性化してしまうこともあります。また、急な腰痛の中には腰椎の骨折や神経の損傷、その他深刻な疾患が隠れている場合もあるため注意が必要です。
腰痛は1つの疾患ではなく、腰(一番下の肋骨からお尻の間)に起こる痛み全般を指し、その中でも発症から4週間以内の腰痛を「急性腰痛症」と呼んでいます。
急性腰痛症は、通称「ぎっくり腰」とも言われ、重い物を持ち上げた時や身体を強く捻った時など、腰に過度な負担がかかる動作によって発症するケースが多いですが、特別なきっかけがなく、朝の起床時などに発症することもあります。
ぎっくり腰は、欧米で「魔女の一突き」とも言われるように突然激しい痛みに襲われるのが特徴で、身体を動かすと痛みがさらに強まります。発症直後はあまりの激痛に身動きが取れず、日常生活に大きな支障をきたすこともありますが、痛みの原因となる特別な疾患や異常がない「非特異的腰痛」であるため、X線検査やMRI検査などを行っても異常は見つかりません。
通常、発症直後の強烈な痛みは徐々に和らぎ、1~3週間程度で自然に治りますが、ぎっくり腰を引き起こすきっかけとなる動作や姿勢、生活習慣を続けていると再発しやすく、たびたび再発を繰り返すうちに痛みが慢性化してしまうこともあるため注意が必要です。
また、突然起こる腰の痛みはぎっくり腰のような非特異的腰痛以外にも、「椎間板ヘルニア」や「脊柱管狭窄症」といった脊椎の疾患や圧迫骨折、さらに感染症や腫瘍性の重い病気(がん)に合併して起こるものもあります。自己判断ではこれらの深刻な疾患を見落としてしまう可能性もあるため、数日経っても痛みが改善しない、もしくはさらに悪化するような場合は、早期に整形外科を受診して正しい診断を受けることが大切です。
ぎっくり腰は年齢に関わらず起こることがありますが、20歳以下の発症は比較的少なく、椎間板や関節などの加齢現象が始まる30代以降に発症が増える傾向があります。
特に以下のような条件に当てはまる方は発症のリスクが高くなるため注意が必要です。
背骨(脊椎)の一部である腰の骨(腰椎:ようつい)は、「椎骨(ついこつ)」と呼ばれる5つの骨が積み重なる構造になっています。
ぎっくり腰の発症原因はさまざまですが、腰に負担のかかる動作や姿勢の悪さ、老化などが原因で、腰関節のずれや椎間板(ついかんばん:椎骨と椎骨の間にある柔らかい組織)の損傷、腰を支える筋肉や腱、靭帯の損傷が起こり、痛みが生じると考えられています。
ぎっくり腰の多くは、何らかの動作をきっかけに突然腰に激しい痛みが起こり、腰を動かすことができなくなります。痛みの程度には個人差があり、発症直後から全く身動きが取れなくなることもあれば、比較的軽い痛みや違和感程度だったものが時間の経過とともに徐々に強まるような場合もあります。ぎっくり腰による痛みは、動作時に悪化し、安静にしていると和らぐのが特徴で、骨や神経には異常がないため、下肢(足)の麻痺やしびれといった神経症状は伴いません。
通常、強い痛みは数日で徐々に和らぎ、通常、発症から1~3週間程度で完治するケースが多いですが、痛みが引かず、「慢性腰痛症(3か月以上続く腰痛のこと)」に移行してしまう場合もあります。慢性腰痛は、急性腰痛に比べると治りにくい傾向があり、特に精神的に強いストレスがある場合や痛みに対してのネガティブな思考が強い場合などは慢性腰痛症に移行するリスクが高くなると言われています。
急性腰痛の診断では、骨折や重篤な脊椎疾患、炎症や腫瘍、神経症状を伴う腰痛との鑑別が重要になります。そのため、診察時には詳しい問診とともに、必要に応じてX線検査などの画像検査を行います。
問診では、痛みのある場所や範囲を確認し、発症時期や発症時の状況、さらに職業や生活習慣、健康状態などについても詳しくお伺いして腰痛の原因を探ります。
特に以下の9つの項目(危険信号)に当てはまる場合には、骨折や疾患など何らかの他の原因が隠れている可能性があるため、必要に応じて検査*1を検討します。
*1血液検査や尿検査、骨密度検査、骨シンチグラフィー検査、筋電図検査、PET検査など
X線を使用して腰椎の状態を確認します。X線検査は骨のズレや骨折、骨の形、骨と骨の間隔の確認ができるほか、他の疾患との鑑別を行う際にも有効です。
当院のX線検査では、従来に比べ、被爆量と撮影時間を少なくする「FPD(Flat Panel Detector)」を導入しており、患者様の検査に伴うお身体の負担を軽減することが可能です。
※上記の9項目(危険信号)に該当しない場合、必ずしもX線検査を行う必要はありません。
MRI検査は、強い磁気と電波を使用し、体内を断面像として画像にする検査です。
X線検査だけでは分からない柔らかい組織(椎間板や神経、筋肉など)の状態を確認することができるため、前述の9項目(危険信号)に当てはまるものがあり、他の疾患との鑑別が必要な場合には検査を検討します。
当院のMRI装置は全身がすっぽりと入る筒型ではなく、お身体の周りが開放されているオープンタイプですので、狭い空間が苦手という方でも安心して検査を受けていただけます。
また、当院では受診当日もしくは翌日中の迅速な検査を心がけていますので、検査結果を基に正確にお身体の状態を把握し、しっかりとした根拠をもって治療方針を決定することが可能です。
急性腰痛の治療は、痛みや炎症を抑えるための対症治療が中心になりますが、症状が落ち着いた時期を見計らい、運動療法なども取り入れていくことで、再発の予防を目指します。
発生直後の激しい痛みがある時は安静にする必要がありますが、急性腰痛症の場合、4日以上の過度な安静は回復を妨げると言われ、無理のない範囲で日常生活を維持する方がより早く回復するため、痛みが落ち着いてきたら少しずつ身体を動かし始めることが大切です。
※各種検査の結果、骨折や脊椎疾患、感染、腫瘍性の疾患による腰痛であることが分かった場合には、それぞれの疾患に応じた治療が必要です。
腰痛は日本人にとても多い症状です。2019年に厚生労働省が行った日本人の自覚症状を調べる調査*2では、腰痛は男性の第1位、女性でも肩こりに次ぐ第2位となっており、まさに日本人の国民病と言っても過言ではありません。
急性腰痛症は自然に治ることが多いですが、一部の方では痛みが残り、慢性化してしまう場合もあります。当院では、問診や検査を基に適切な診断・治療を行うとともに、筋肉を付けるトレーニングや柔軟性を高めるストレッチ、姿勢の改善の指導も行うことで、痛みの慢性化や再発予防にも力を入れていますので、日常生活に支障をきたす腰痛にお悩みの場合は、早期にご相談ください。