疾患
disease

半月板損傷

半月板損傷とは、膝関節の中にある「半月板(はんげつばん)」に亀裂が生じたり、一部が欠けてしまったりする状態です。アスリートに多いスポーツ障害の一つですが、加齢による半月板の変性が原因で起こる場合もあり、慢性化すると変形性膝関節症を引き起こすリスクが高くなるため、早期に発見して適切な治療を行うことが大切です。

半月板損傷とは

膝の関節は、大腿骨(だいたいこつ:太ももの骨)と脛骨(けいこつ:すねの骨)、そして膝のお皿と言われる膝蓋骨(しつがいこつ)で構成され、身体の重みを支えるとともに、曲げたり伸ばしたりすることで、立つ、座る、歩くなど、さまざまな動作を可能にしています。これらの骨は、膝周辺にある筋肉や靭帯、腱によってしっかりと支えられており、大腿骨と脛骨の間にある半月板が関節を安定させるとともに、膝にかかる荷重を分散させて衝撃を吸収する重要な働きをしています。

膝の内側と外側にそれぞれ1つずつある半月板は、線維軟骨と呼ばれる柔らかい板状をしているのが特徴で、上から見た時に三日月のような形をしていることが名前の由来になっています。
膝に過度な衝撃がかかったり捻ったりして半月板を損傷すると、曲げ伸ばしの際に痛みや引っかかる感じが生じ、重症の場合は膝が動かなくなり、激痛で歩けなくなることもあります。

半月板は外周部分の1/3程度しか血流がなく、修復に必要な栄養が届きにくいため、一度損傷してしまうと治りが悪いのが特徴です。基本的にダメージを受けた半月板が自然に良くなることはなく、適切な治療を行わないまま長期間放置してしまうと、徐々に膝の安定性や衝撃を吸収する力が失われ、変形性膝関節症*1を引き起こすリスクが高くなるため注意が必要です。
*1膝の骨の表面を覆う関節軟骨がすり減って骨の変形性を招き、膝の痛みや歩行障害を引き起こす疾患

半月板損傷セルフチェック

以下のような症状がある場合、半月板を損傷している可能性があります。
当てはまる項目がある場合には早期に受診することをおすすめします。

  • 歩いた時や膝を曲げた時に痛みがある
  • 膝を曲げた時に引っ掛かる感覚がある
  • 膝が腫れている、または熱感がある
  • 膝が曲げにくい、曲がらない
  • 膝が重だるい、こわばりがある
  • 膝を動かすと異常な音(クリック音)が鳴る
  • 歩行時に膝がガクッと崩れることがある
(図)膝の構造(横から見たところ)

半月板損傷の原因

半月板損傷には、スポーツ時のケガなどによって起こる外傷性と、加齢による半月板の変性や生まれつき半月板が大きい場合など、ケガ以外の原因で起こる非外傷性の2種類があります。

外傷性

スポーツ時に体重がかかった状態で膝を捻ったり、強い衝撃が加わったりして半月板が負荷に耐え切れずに断裂を生じるもので、おもに、走る・跳ぶといった動作の他、ターンやストップなど急な切り返しの動きを伴う競技、さらに接触の激しい競技などで起こります。
半月板のみ損傷する場合もありますが、ジャンプの着地などで膝に強い衝撃が加わった際、前十字靭帯や内側側副靭帯の断裂に伴い損傷するケースが半数以上を占めています。また、前十字靭帯損傷の後遺症で膝に緩みが生じ、その影響で半月板を傷めるケースもあります。

≪発生頻度の高い競技≫

バスケットボール、バレーボール、体操、サッカー、テニス、野球、スキー、ラグビー、ラクロス、アメリカンフットボール、陸上など

非外傷性

半月板は、年齢が上がるにつれ、すり減って摩耗します。加齢によって傷つきやすくなった半月板に外から何らかの力が加わることで起こるものを変性断裂と言います。重い荷物の運搬など無理な姿勢で膝を酷使する仕事に従事される方に多く発症しますが、40~50代になると半月板が変性している方も多く、些細なケガや日常生活のありふれた動作の中で発症することもあります。
その他、生まれつき半月板が大きくて分厚いため(円板状半月板*2)、関節の中で引っ掛かりやすくなって断裂を生じるケースがあり、これを円板状半月板損傷と呼んでいます。
*2 円板状半月板:外側の半月板が生まれつき半円状をしているのが特徴で、アジア系人種に多いと言われる(3~16%程度と報告されている)。無症状の場合もあるが、小学生などでも膝の痛みを引き起こすことがある。

半月板損傷の症状

半月板を損傷すると、曲げ伸ばし時に膝の痛みや引っかかり感(キャッチング)を生じ、パソコンをクリックした時のような異常な音(クリック音)を伴うこともあります。損傷範囲が大きく、断裂した半月板の一部が関節の隙間に入り込んでしまうと、急に膝が動かなくなるロッキングと呼ばれる状態になり、激痛で歩けなくなるケースもあります。

また、長期化して関節の中に炎症が起こると、膝に水(関節液)が溜まったり、血の塊(血腫)ができたりして腫れや熱感を伴うことがあります。痛みなどの症状が続くうちに次第に患部を無意識にかばうようになり、太ももの筋肉(大腿四頭筋)が萎縮すると、筋力が低下して歩行中に膝がガクッと崩れるギビングウェイという症状が起こることもあります。さらに、断裂してめくれた半月板が大腿骨や脛骨の関節軟骨を傷付けてしまうと、骨の変形を伴う変形性膝関節症の発症リスクが高くなるため注意が必要です。

断裂の分類

半月板の損傷はさまざまなきっかけで起こることがあり、損傷の状態や程度がそれぞれ異なります。損傷の形状によって以下のように分類されています。

  • 縦断裂(じゅうだんれつ):半月板の形状に沿った方向に亀裂が走る状態。
  • バケツ柄状断裂:大きく裂けた部分がバケツの持ち手(柄)のように見える状態
  • 横断裂(おうだんれつ):半月板を分断するように亀裂が入る状態。
  • 円板状半月板断裂:生まれつき半月板が厚くて大きい円板状半月板に亀裂が入る状態
  • フラップ状断裂:半月板が斜めに裂け、端がブラブラしている状態
  • 水平断裂:半月板を2枚におろしたような水平方向に亀裂が入る状態。
(図)半月板損傷の分類

半月板損傷の検査・診断

半月板損傷の診断には、以下のような検査を行います。

診察・徒手検査(としゅけんさ)

診察では、発症時期や症状について詳しいお話を伺うとともに、患部にストレスを与え、痛みのある場所やどんな動きで痛みが誘発されるかなどを確認する徒手検査を行います。

  • マックマレーテスト
    膝を最大に曲げた状態から、膝下部分を回しながら徐々に膝を伸ばします。内回しの時に痛みが出ると外側半月板損傷、外回しの時に痛みが出ると内側半月板損傷が疑われます。
  • アプレー牽引テスト
    うつ伏せで膝を90度に曲げ、太ももを固定した状態で、膝下部分を上に引っ張って膝の関節包を緊張させます。痛みが誘発される場合は陽性(損傷がある)と考えられます。
  • アプレー圧迫テスト
    うつ伏せで膝を90度に曲げ、太ももを固定した状態で患者様の足を持ち、膝に向かって圧迫しながら膝下を内と外に回します。内回しの時に痛みが出ると内側半月板損傷、外回しの時に痛みが出ると外側半月板損傷が疑われます。

画像検査(MRI)

問診や徒手検査の結果、半月板の損傷が疑われる場合にはMRI検査を行います。
MRIは、強い磁気と電波を使い、体内を断面像として画像にする検査で、X線検査では分からない半月板や周辺にある靭帯の状態も確認することが可能です。
当院のMRI装置は全身が入る筒型ではなく、お身体の周りが開放されているオープンタイプですので、狭い空間が苦手という方でも安心して検査を受けることができます。
また、当院ではできるだけ受診当日、もしくは翌日中に検査を行うことを心がけておりますので、検査まで何日もお待たせすることがなく、正確な検査結果を基に治療を提供することが可能です。

(画像)MRI検査装置
(画像引用)公益社団法人 日本整形外科学会 半月(板)損傷

半月板損傷の治療

半月板損傷の治療は、大きく分けて「手術療法」と手術を伴わない「保存的治療」の2種類があります。また、近年では第3の治療として「再生医療」も登場しています。基本的に軽度の断裂は保存的治療から治療を開始しますが、断裂部が大きい場合や、保存的治療で症状が改善しない場合には手術療法や再生医療を検討します。

保存療法

保存療法には以下のような種類があります。

  • 薬物療法
    痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬:NSAIDs*3)の服用、外用薬(湿布)などで痛みを和らげます。
    ヒアルロン酸*4の関節内注射を行うこともあります。
    *3 NSAIDs:痛みや炎症を引き起こす「プロスタグランジン」という物質の生成を抑制することで痛みを抑える作用がある薬剤でロキソニンやボルタレンなどの種類がある。
    *4 ヒアルロン酸:膝関節軟骨の成分の一つで、保水率が高く、関節の内部に注入すると潤滑油のような働きをするため、膝の可動域を広げ、痛みや腫れの改善効果も期待できる。
  • 物理療法
    赤外線による温熱治療などで血流を促進し、痛みの軽減や運動機能の改善を図ります。
    当院1階には物理療法スペースがあり、患者様の症状に合わせた治療をご提案いたします。
  • 装具療法
    足底板(インソール)やサポーター、テーピングで膝を補助・補強することで、痛みを軽減し動きやすい状態に調整します。
  • 運動療法
    膝関節にかかる負担を軽減するため、膝関節周辺の筋肉の筋力強化を行います。当院では2階のリハビリスペースで理学療法士による個別療法を行っています。担当制となっておりますので、患者様との信頼関係をしっかり築きながら最適な治療を行うことが可能です。
    ※この他、保存的治療では、関節内に水が溜まっている場合には注射で水を抜く処置を行う場合もあります。

手術療法

膝が動かなくなるロッキング症状が起きている場合や、従来の保存治療だけでは十分な効果が得られない場合などは手術を検討します。半月板損傷の手術には以下の2種類があり、通常は関節鏡と呼ばれる内視鏡を使って行います。

  • 半月板縫合術
    半月板の損傷した部分を縫い合わせる手術です。半月板を温存しながら機能を回復できるのがメリットですが、縦断裂であることや損傷部位に血流があること、断裂から日が浅いことなど、適応条件が限られます。
    ※近年は半月板温存のため、横断裂や水平断裂でも縫合術が行われることが増えています。
  • 半月板切除術
    半月板の損傷した部分を切り取る手術です。早期に痛みを軽減できるのがメリットですが、関節軟骨(骨の表面を覆う柔らかい組織)を保護する働きがある半月板を切除すると関節軟骨への負担が増え、将来、変形性膝関節症を誘発するリスクが高くなるため、切除範囲は最小限に抑えます。
    ※手術治療が必要になる場合、石巻赤十字病院などの提携先病院をご紹介します。
(画像引用)社団法人 日本整形外科学会 半月(板)損傷

「再生医療(CPRP-FD療法)」について

当院では、保存治療だけでは効果が得られない方や、手術はできるだけ避けたいという方の新たな選択肢として、「CPRP-FD療法」と呼ばれる再生療法(バイオセラピー:人の血液や細胞を利用して行う治療)を実施しております。

再生医療(CPRP-FD療法)とは?

再生医療は、人の身体に備わった自己再生能力(自然治癒力)を利用して行う治療です。
血液中に含まれる血小板にはさまざまな成長因子が含まれており、何らかのケガで出血しても、やがて傷がふさがり、かさぶたになって治るのは、この血小板の高い再生能力によるものです。

近年、整形外科の分野では、血小板の高い再生能力を活用した再生医療が注目を集めており、「多血小板血漿(たけっしょうばんけっしょう:PRP)*5」と呼ばれる血小板を多く含む液体を患部に注入する「PRP療法」は、PRPに含まれる成長因子がつらい痛みを緩和し、治癒を早める効果があるとして変形性膝関節症や膝関節のケガの治療などに多く用いられています。
*5 多血小板血漿(Platelet-Rich Plasma):患者様から採取した血液を遠心分離器にかけ、血小板が豊富な部分だけを抽出したもの。50mlの血液から5ml程度抽出される。

当院で導入している「CPRP-FD療法(Cell-free Platelet-Plasma Freeze Dry)」は、このPRP療法をさらに進化させた治療であり、PRPから必要な成長因子だけを抽出して活性し、専用のフィルターで白血球などの細胞成分を取り除くセルフリー加工(無細胞加工)を施すことで、成長因子がより損傷部に届きやすくなっているのが特徴です。
組織を修復する作用や抗炎症作用、さらに関節軟骨の破壊を誘発する「サイトカイン」を減らす作用のある成長因子が通常のPRPよりも多く含まれているため、より高い除痛効果が期待できます。また、凍結乾燥(フリーズドライ)加工を行うことで、成長因子の濃度を低下させることなく常温で6か月間保存できるようになり、患者様のご都合の良い時に治療を受けていただくことが可能です。

CPRP-FD療法のメリット

CPRP-FD療法は注射で行うため、切開の必要がなく、外来での治療が可能です。
また、患者様ご自身の血液を使用するため、拒絶反応やアレルギー反応が起こりにくいのが特徴で、繰り返し治療を受けていただくことが可能です。さらに、一度の治療で2年程度効果が持続し、従来のPRP 療法に比べて腫れや痛みなどの副作用が少ないのも大きなメリットです。

個人の血小板に含まれる成長因子を活用するため、効果には個人差もありますが、当院では、治療を受けた9割の方の痛みが半分程度にまで減少するなど、良好な結果が得られています。 また、CPRP-FD療法は治療後のリハビリも重要になりますが、当院では担当の理学療法士が丁寧にアフターフォローを行うため、治療の効果を最大限活かすことが可能です。 ※再生医療についての情報は、こちらの記事をお読みください

よくある質問

手術を受けた場合、どれくらいで競技に復帰できますか?

まとめ

半月板損傷は早期発見・早期治療が肝心です。損傷が軽度の場合、ヒアルロン酸注射や運動療法、足底板などの効果が期待できますが、慢性化してしまうと手術が必要になるケースもあるため、痛みや違和感などが現れた場合には、早期に受診して検査を受けることをおすすめします。また、当院では患者様の選択肢を広げるため、地域初の再生医療の治療も実施しております。 ご興味のある方はお気軽にご相談ください。